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エンバーロ テノリオ・Jr ~「悲劇のピアニスト」が放つグルーブの一本背負い

エンバーロ
テノリオ・Jr


ブラジルのジャズサンバを代表するピアニスト、テノーリオ・Jr(ジュニオール)。人々は彼のことを「悲劇のピアニスト」という。

ブエノスアイレスに演奏ツアー中の1976年3月18日「タバコを買いに行く」とメモを残し外に出たままホテルを出たところ、アルゼンチンの軍事政府に反政府ゲリラと勘違いされ逮捕される。頭から袋をかぶせられたまま眠ることも許されずに何日もたちっぱなしにさせられたり、汚物のためられた水槽の中に何度も浸けられたりといった数々の拷問が繰り返されたという。

死にそうで死なないといういわば「半殺し」のような拷問にかけられている最中に彼の逮捕が「勘違い」だったことが判明するものの、アルゼンチン軍事政府はいまさら釈放するのは面子にかかわるということでひっこみがつかなくなり、そのまま反逆罪の烙印をおされたまま虐殺されてしまったのである。

本作はそんな彼が残した「たった1枚のリーダー作」である。決して録音の質はよいといいがたいのだが、ジャズサンバ史上唯一無二の躍動感、テクニック、繊細さを兼ね備えた傑作で彼の魅力が120%詰まった1枚である。アップテンポなサンバの「Fim de Semana em Eldorado」はまるで「グルーブの一本背負い」の連続技を目の前にしたように、聴くものを興奮の坩堝にたたきつける。「Nebulosa」はリズミカルで繊細なキラーチューン。彼が明るいだけのほかのピアニストと違う「影の部分」がよくわかるのがこの曲で、今でもクラブミュージックのサンプリングのネタによく取り上げられているという。

もしあのとき彼がタバコを買いに外出しなかったら今頃はどんな音楽が生まれていたのだろうと思わざるを得ない。イデオロギーの対立は時として悲惨な勘違いを起こすのである。

エンバーロ(BOM1906)

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Michel Camilo ミシェル・カミロ ~「さすが!」という内容。名刺代わりの1枚

Michel Camilo
ミシェル・カミロ


ご存知ミシェル・カミロ(P)はドミニカ共和国生まれのジャズピアニスト。「明るく流麗でエモーショナルで繊細」といわれるその卓越した技量はクラシックやジャズ、ポップスなどジャンルを問わず各音楽界から「マエストロ」と賞賛されている。瞬時に浮かんだメロディーラインを一点の曇りもないクリアな音色で目にも留まらぬ速さ弾ききる手さばきは、本当に手が見えないほど鮮やかで情熱的だ。

共演者もつわもの揃いで後にチック・コリア・エレクトリック・バンドへ加入することとなる超絶したテクニックで新進気鋭のデイブ・ウエッケル(Dr)のトリッキーでステディーなタイムキーピングは特筆モノ。当時のウエッケルはメカニカル過ぎるという声もあるのだが、シンバルの低音部をうまくムラなく引き出すレガートやアドリブにすぐに応答する瞬発力の高さはミシェル・カミロのスタイルにぴったりとはまっており正に適役である。

最期のビル・エバンス・トリオをささえたベースのマーク・ジョンソンもカミロの情熱的な血をグルーブさせる一方、カミロの奏でるエバンス的なハーモニーへカウンターメロディーをそえて「カミロの静の部分」をメロウなベースラインにて歌い上げる。

本作は1988年の作品で自分の名前を冠しているいわば「名刺がわり」となる1枚。ラテンジャズのスタンダードとも言うべきほどのオリジナル曲「Caribe」やジャズスタンダードの「Blue Bossa」などラテンの血が騒ぐものから、ビル・エバンスに捧げられた美曲「Nostalgia」のような叙情性たっぷりのものまでと幅広い曲想が収められている。

「Blue Bossa」においての激しくすばやい打鍵はバコンバコンとピアノが鳴りまくっているようすが目に浮かぶ。モンゴ・サンタマリアの参加はちょっとしたボーナスだ。カミロの「静と動」がバランスよく収められており、ミッシェル・カミロを知るための外せない1枚である。


Michel Camilo

■CALLE54
これ1枚でラテンジャズ界の主要人物をほぼ網羅できる伝説的な映像作品。カメラが追いつけないほどのミッシェル・カミロの「神の手さばき」を見ることができる(見えないということを見ることができる)。そろそろ入手が難しくなってきているようで見つけたら即ゲット!

CALLE54 [DVD]


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鳥の歌~ギター小品集 山下和仁 ~選曲よし!歌心あふれる神業のギタリズム

鳥の歌~ギター小品集
山下和仁


山下和仁。わが国を代表するクラシックギター界の名手。その想像を絶する超絶技巧と音楽性は海外まで名をとどろかせている。有名なところでは以前記事で取り上げた「展覧会の絵&火の鳥」で、これはギター1本でオーケストラサウンドを極限まで再現した超絶技巧の塊のような作品であった。

本作は山下が1991年に録音した「小品集もの」。ちょうど山下が30歳の誕生日を迎えたころという。前出の「展覧会の絵&火の鳥」のような聴くものを圧倒するような楽曲もあるのだが、それはちょっとしたスパイス程度にとどめてある。

ギターではおなじみの禁じられた遊びやプーランクやシベリウスやルーセルなど近代作曲家の小品集など肩の力を抜いて楽しめる楽曲を収録したものだ。山下自身が長年温め続けてきた選曲だそうで、気軽に楽しめるものから同業者(ギタリスト)を驚かせるような楽曲までそのバリエーションは幅広い。個人的にはハーモニクスなどを駆使したボロディンの「中央アジアの草原にて」という選曲がツボだ。

山下の得意とするところの指板全体を駆け巡るような複雑きわまる超絶早弾きを余裕綽々で弾ききってしまう14曲目や19曲目はもちろんのことだが、さらに驚くべきところは音色のコントロール力。複数のメロディーが同時進行するような楽曲において、それぞれの声部にべつべつの人格や宿ったかの如く手元だけで音の遠近感をここまで表現できることである。それぞれのパートをまるで複数の人間にて弾きわけていると思ってしまうほど音に表情があふれているのである。

これほどまでにギターをギターとして意識させずにその世界に没頭させられてしまう演奏はまさに神業である。


鳥の歌~ギター小品集

■鳥の歌~ギター小品集
こちらが映像作品。山下の超絶技巧を目の当たりにしたいギタリストはぜひチェックされたし。

山下和仁ギター小品集/鳥の歌 [DVD]

■展覧会の絵&火の鳥
世界を仰天させた「ギター1本のみの一人オーケストラ」。鬼のような音色の弾きわけや超絶技巧が冴え渡る名盤。このすごさはギタリストでなくても固唾をのんで見守るほどだ。こちらの映像作品はないのだろうか。

展覧会の絵&火の鳥

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Visitation サム・ジョーンズ ~「グルーブ職人」の貴重なリーダー作

Visitation
サム・ジョーンズ


キャノンボール・アダレイやオスカー・ピーターソン、バリー・ハリスやシダー・ウォルトンのグループなどベーシスト人生のほとんどをサイドマンとして数多くの作品を残した「グルーブ職人」サム・ジョーンズ。彼のどこまでもまっすぐなベースの音色は繊細さこそないもののジャズで最も大事な「スイングすること」に傑出しているため、ニューヨークでは引く手数多(あまた)のバンドをドライブさせるベーシストである。

本作はニューヨーク指折りのグルーブメイカーである彼が1978年鬼籍にはいる数年まえに残したリーダーアルバム。ポール・チェンバースの「Visitation」をはじめベーシストとしての「バンドをドライブさせること」という仕事の領分を堅実にこなす。音を切るタイミングや強弱のつけかたが絶妙なのでメロディーを弾いてもベースライン同様にものすごくドライブするのである。

ポスト・コルトレーンとささやかれているまだ若いボブ・バーグ(Ts)と、「百の音色を持つ男」として存在感が光る日野皓正のコルネット、マックス・ローチやフレディー・ハバードとの共演が輝かしいロニー・マシューズ(P)、後にマイルス・デイビスに大抜擢されるドラムのアル・フォースターなど共演者も充実。「グルーブすることが基本」といわんばかりのがっちりとしたベースに支えられているためか全員見事な一体感のプレイである。

ストレートアヘッドなジャズの不遇時代とされる1970年代を支えた「北欧のブルーノート」といわれるステープル・チェイス・レーベル。大ホームランか大凡打のどちらかしかないなど、なにかと揶揄されているレーベルであるのだが、本作においては派手さはないものの彼のベースの職人ぶりが存分に生きた名盤なのである。


Visitation

■Double Bass
骨太主義のサム・ジョーンズ、流麗なテクニックのペデルセン。全くベクトルが異なるベーシスト2人がお互いのよいところを引き出しながら共演する名作。晩年のチェット・ベイカーを支えたフィリップ・カテリーン(Gt)の参加はちょっとしたボーナス。
一時は入手困難な超レア盤であったのだが、現在は探し回らずとも気軽に購入できるAmazonに感謝。

Double Bass

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