わんわんわんの名盤探索

わんわんわんがオススメする名盤

グランド・エンカウンター ジョン・ルイス ~なんという1拍の長いグルーブ!聴いたことがなければまず聴くべし

グランド・エンカウンター
ジョン・ルイス


本作はMJQ(モダン・ジャズ・カルテット)のジョン・ルイスの代表的な作品。「20世紀を代表するジャズの名盤」的な特集で必ずというほど取り上げられるのでご存知の方も多いだろう。まだ本作をお持ちでない方でジャズが好きならば当記事を読まずとも手に入れても全く問題ない。

西海岸サウンド(職業的ミュージシャン)の代表としてビル・パーキンス(Ts)やチコ・ハミルトン(Dr)、ジム・ホール(Gt)。それに対するニューヨークサウンドはジョン・ルイス(P)とパーシー・ヒース(B)。西海岸のミュージシャンと東海岸のミュージシャンがの出会いみたいな企画の作品だ。本作発表時ジョン・ルイス(P)はMJQにて既に十分な知名度を得ていたわけだが、これが彼の初リーダー作という。

ジョン・ルイスのスタイルとしてはMJQに代表されるようなブルースフィーリングの中にバッハ的なクラシカル要素を取り入れた不思議なサウンドである。MJQのビブラフォン奏者であるミルト・ジャクソンがこってこてのブルースフィーリングを持ち合わせていたので、ピアノのジョン・ルイスのクラシカルな素養が「ブルースとクラシックの不思議な綱引き」を際立たせていたのである。

ここでのジョン・ルイスはどちらかというとブルース寄りの立ち位置(東海岸代表ということもあり、ほどよいコテコテさなのである)でアンサンブルジャズとサウンドの対比を楽しんでいる。彼のもつブルース魂とクラシカルな素養が程よいバランスにて西海岸サウンドに溶け込んでいる。

ポール・デスモンドがテナーを吹いたような風合いのビル・パーキンス(Ts)がサブトーンを駆使して軽やかに歌う様子は本作を名盤に押し上げるのに一役買っていることは間違いない。チコ・ハミルトン(Dr)の秀逸なブラッシュワークとパーシー・ヒース(B)の粘るベース音色、彼らが生み出すグルーブは1拍がとてつもなく長いのでより一層のびのびとしたタイム感にてビル・パーキンスのテナーが歌っている。

グランド・エンカウンター
スポンサーサイト

テーマ:本日のCD・レコード - ジャンル:音楽

バッハ:ゴルトベルク変奏曲 グレン・グールド(P) ~グールド伝説の始まり

バッハ:ゴルトベルク変奏曲
グレン・グールド(P)


そういえばグレン・グールドの「ゴルトベルク変奏曲」について補足のようなかんじで数回記事にて触れたことがあったのだが、今まで記事の本筋として取り上げたことがなかった。グールドといえば「ゴルトベルク変奏曲」であるのにうっかりしていたのだ。

伝説のピアニスト、グレン・グールドは生涯にわたって2回バッハの「ゴルトベルク変奏曲」を録音している。1955年の彼のデビュー作と死去する1年前の1981年だ。どちらもクラシックの名盤である。本作は彼のデビュー作で1955年22歳のときに録音したもの。ルイ・アームスロトングの新譜をおさえて全米ヒットチャート1位になったというクラシック史上最大のヒット作であった。

バッハの時代にはもちろんピアノという楽器はまだ生まれておらず、この曲はチェンバロにて演奏することを前提に書かれた曲である。チェンバロの軽やかな音色がとても似合うのであるがグールドはこの曲をあえてピアノで演奏したのである。駆け抜けるような疾走感と若さあふれるしなやかなリズムは彼の神がかりともいうべきピアノコントロール力を物語っている。音価(音をきるタイミング)のすばらしさといったら素晴らしく、投げる球が毎回ストライクみたいな抜群のコントロール力である。

「ゴルトベルク変奏曲」には対位法独特の生き物のようにうねりまくる複数のメロディーがあるのだが、これをたった10本の指でこれほどまで完璧かつ鮮やかに弾ききってしまっている。これがデビュー作、グールド伝説の始まりなのである。



バッハ:ゴールドベルク変奏曲(55年モノラル盤)

■ゴルトベルク変奏曲
こちらが1981年の晩年に録音されたラストアルバム。バッハに始まりバッハにて幕をとじたグールドの人生だった。

バッハ:ゴールドベルク変奏曲(1981年録音)

■ゴルトベルク変奏曲 キース・ジャレット
こちらはジャズピアニストのキース・ジャレットがチェンバロにて演奏した「ゴルトベルク変奏曲」である。キースはジャズ風に弾いているのではなく真正面からこの楽曲に挑んでいる。

テーマ:本日のCD・レコード - ジャンル:音楽

Reunion メル・トーメ ~名コンビ、マーティー・ペイチとの再共演

Reunion
メル・トーメ


「至高のヴェルベットボイス」ご存知JAZZボーカル大御所メル・トーメの別名である。メル・トーメはマーティー・ペイチとの競作「メル・トーメ・スウイングズ・シューバート・アレイ」などなど後世に語り継がれるべき名盤を残している。

本作はメル・トーメとマーティー・ペイチが1988年に共演した久しぶりの作品。アルバムタイトルそのままである。1曲目の「Sweet Georgia Brown」からトーメの超絶のろれつ回しが豪華なビッグバンドサウンドにのってハイスピードで炸裂する。どうやったらそんな風にひとつも引っかからずにフレーズを歌えるのかが不思議なくらいだ。

サウンド的にはエレキピアノの導入など新しい試みがされているが、なんと言ってもジャズスタンダードのみならずドナルド・フェイゲンの名作「ナイトフライ」からの「Walk Between Raindrops」などをカバーしているところだ。メル・トーメが歌うとドナルド・フェイゲンがうたう原曲とは一味違う趣になるのが面白い。また、バラッドにおいては滑らかな歌声でしっとりと歌い上げる。

古今東西緩急自在、どんな曲でもハイクオリティーに歌いこなす彼はミュージシャンズミュージシャン。そのエンターテイメントぶりには歌手の鑑で同業者からもうらやましがられるほどである。ここでのドラムはメル・ルイスに代わって職人ジェフ・ハミルトン。彼の参加はちょっとしたボーナスだ。

ジャケットのアートワークからは名盤の雰囲気が出ていないのだが一度聴いてみれば確かな内容に安心する。現在はこれほどまでの名作であってもなかなか手に入りにくくなっているのが悲しい現実である。

Reunion

■メル・トーメ・スウイングズ・シューバート・アレイ
こちらは現在でも入手しやすい名盤。

メル・トーメ・スウイングズ・シューバート・アレイ

■ナイトフライ
スティーリー・ダンのドナルド・フェイゲンのソロアルバム。もはや説明不要のマスターピース。ドナルド・フェイゲンは超が3つくらいついても足りないほどのジャズマニア。彼はものすごく耳が肥えているためレコーディングに呼ばれたミュージシャンは現場慣れしたベテランでさえ気が引き締まるという。それにしてもジャケットが渋すぎる。

Nightfly

テーマ:本日のCD・レコード - ジャンル:音楽

静止した夢のパヴァーヌ 松本和将(P) ~「時が止まった夢の中」を体験する名盤

静止した夢のパヴァーヌ
松本和将(P)

幻想的なアートワークが印象に残る。タイトルにもなっているキーワード「静止」「夢」「パヴァーヌ(舞曲)」の世界観を的確に捉えた見事なアートワークである。

通常クラシックは作曲家単位で作品をリリースされることが多い。しかしここでの松本は「いかにプレイアデス舞曲集を効果的に聴いていただけるか」というところに主眼を置いたという。なので吉松隆のプレイアデス舞曲集を軸にプーランクやスカルラッティ、シベリウスの楽曲が織り混ぜられて1枚の作品になっている。構想を練りに練って曲順を熟考するのに結構な期間を要したという。

松本の取ったこの手法により個々のショートシーケンスが違和感なく一つのストーリーとして「静止」「夢」「パヴァーヌ(舞曲)」をキーワードに広くて遠い透き通った世界へと展開されてゆく。聴いているこちらは彼の圧倒的に類まれな熟達されたピアノタッチによりただただ手を止めて息を殺して耳を傾けてしまう。彼の音色を聴いているうちにいつの間にかこちらの時が「静止」するのである。

興味深い収録当時のエピソードがライナーノートに記載してある。真っ暗で大きなコンサートホールのなかにピアノだけポツリとスポットライトが当たっている。その中で「ひっそりとした儀式のように」レコーディングが進められたという。これが演奏者をプレイに集中させるための演出ではなく、折りしも近づいている台風の中、照明装置が発するノイズ対策のため必要最小限の照明をということでこのような状況が出来上がったという。

暗闇の中でプレイしたせいか松本の発するピアノの音色はきらきらと儚くきらめいている。それはアートワークのように果てしなく広がる闇夜に落ちた一筋のきらめきのようである。最終曲の「真夜中のノエル」にいたっては美しさのあまり身震いした上に自然と涙腺が緩んでしまう。この「時が止まった夢の中」にいるような不思議な静寂感はクラシックファンでなくても感動せざるを得ない。

静止した夢のパヴァーヌ

テーマ:本日のCD・レコード - ジャンル:音楽

The Paul Desmond Quartet Live ポール・デスモンド ~いつの間にか「全部持っていかれる」名盤

The Paul Desmond Quartet Live
ポール・デスモンド

「酒がうまくなる」。こんなにこの表現がぴったり馴染む人はズート・シムズかこの人くらいだ。とにかく一度耳に入ったら圧倒的な存在感で無意識のうちにずっとそのフレーズを追いかけまわしてしまう。デイブ・ブルーベック4でおなじみの非常に中毒性の高いアルトの名手だ。

本作は1975年の米国トロントにて行われたライブでポール・デスモンドのファンならば抑えておきたい1枚である。
ピアノではなくギターを導入したピアノレスカルテットなのである。ギターはジム・ホールではなくエド・ビケットという人だ。わんわんわんの勉強不足で曲中のコンピングの音使いやソロなどジム・ホールの築いた「ギターをピアノのように弾く」スタイルを踏襲した名手のようだ。

本作はポール・デスモンドのプレイの魅力がつまっており、とにかく出だしの一音からため息が出てしまうほどである。一聴すると彼のサウンドは非常に軽やかな耳あたりとなっているのだが、楽器をやっている人に言わせると驚くほどストイックさを積み重ねた結果あのサウンドを作り上げているという。

そのストイックさは例えるならば緻密で実写的な硬筆画のようで、細かく繊細なタッチを積み重ねて遠景近景、筋肉や表情の描写を駆使して効果線やオノマトペに頼らずストーリーに緊張感をもたせるスタイルの「実力派漫画家」のようである。

きらびやかなテクニックではなく基本的な基礎技術がしっかりしておりピッチやサブトーンの使い方など楽器の歌わせかたが完璧なのである。気がつくとバンドのグルーブに身を任せてしまいずーっと身を任せていたい気分になれる。彼のように最初の数小節だけでこのような世界観を作れる人はそうそういない。

録音の質はさほどのレベルで決してよいとはいえないが、それでも録音の質を差っぴいてもまだ有り余るほどのおつりがくるほどの隠れ名盤である。

Live

テーマ:本日のCD・レコード - ジャンル:音楽

ボサ・ノヴァU.S.A. デイブ・ブルーベック ~西海岸ボサノバジャズの名盤

ボサ・ノヴァU.S.A.
デイブ・ブルーベック

デイブ・ブルーベックといえば何とかの一つ覚えのように名曲「テイク・ファイブ」があたまをよぎるのだが、まだまだ名盤と呼ばれる佳作はたくさんある。

かつてブルーベックは「西海岸ジャズ」「踊れないジャズ」としてツウとされる方々から軽視されていたという。1950年代の西海岸は映画やテレビ産業の隆盛に伴い、昼間はスタジオで譜面相手に商用音楽を職業とするスタジオミュージシャンが集まる。ブルーベックもそのうちの一人である。

東海岸サウンドのような黒っぽさあふれるジャズではなくアンサンブルの和を優先するようなスタイルや、当時としては珍しい変拍子などをジャズに取り入れたことがジャズを見失ったとツウと呼ばれる方々からのやっかみの対象となったのだろう。

そんな話はおいといて、本作はスタンゲッツが火付け役となった60年代ボサノバブームに乗じて収録された1枚。数多くのミュージシャンが何の特徴も驚きもない「ボサノバ風」に落ち着いてしまうのだが、本作は非常に聴き応えがあり渋い仕上がりとなっている。

やはり相棒は風のアルト奏者ポール・デスモンド。時に柔らかくときに鋭く変幻自在の音色はどす黒いブルースフィーリングもばっちりだ。名手ジョー・モレロ(彼の師匠は名著スティック・コントロールの著者直系の弟子グラッド・ストーン)のテクニカルだがテクニックを感じさせない丁寧なドラムがここでも冴え渡る。特に1曲目や8曲目のスイスアーミートリプレッツを駆使したリズムパターンはアイデア賞ものだ。

名盤の「タイムアウト」や「Live at the Berlin Philharmonie」(ここでのドラムのアラン・ドーソンは無敵!)とあわせて持っておきたい1枚だ。

ボサ・ノヴァU.S.A.

■Time Out
名曲「テイク・ファイブ」が収録されている問答無用の名盤。それはもう一家に一枚のレベルである。


■Live at the Berlin Philharmonie
センターを務めるのはジェリー・マリガン(Bs)。名ドラマーのトニー・ウイリアムスの師匠アラン・ドーソンのドラムが炸裂する。

Live at the Berlin Philharmonie

■スティックコントロール
ジャンル関係なく打楽器奏者ならば必ず出会う教則本。
ジョー・モレロの描くスティックの軌跡は余分な力みとは無縁で果てしなく美しい。ちなみにピーター・アースキンはジョー・モレロの弟子である。

Stick Control for the Snare Drummer

テーマ:本日のCD・レコード - ジャンル:音楽

Feels So Good チャック・マンジョーネ ~名盤の秘訣は心の中を吹き抜けるさわやかな風のような音色

Feels So Good
チャック・マンジョーネ


「なんだ、ジャズじゃなくフュージョンじゃないか」と先入観をもって聴いても、いつのまにか1曲目のフリューゲルホルンが紡ぎだす美メロに心を奪われてしまう。気分はジャズでフュージョンなんて聴く気が起こっていないときでも毎回彼のやさしい美メロを聴けば改心せざるを得ない。

チャック・マンジョーネはジャズ・フュージョンで活動しているトランペット、フリューゲルホルン奏者。ディジー・ガレスピーに可愛がられ、ディジーの紹介でアート・ブレイキーのジャズ・メッセンジャーズに抜擢されるジャズ一直線の人生を歩んできた。70年代クロスオーバー(フュージョン)音楽の台頭とともにメイン楽器をトランペットから、よりマイルドで表情のつきやすいフリューゲルホーンに持ちかえる。

本作は彼の代表作。冒頭のタイトル曲「フィール・ソー・グッド」の美しさはぐうの音もでない。そこからグイグイと引き込まれ、ジャズなのかフュージョンなのかということは本当に愚問であることに気づかされる。本気で聴いても物足りなさはなくBGMとして聴いても全く邪魔にならない。懐かしくも新しい彼の優しい音色は心の中を吹き抜けるさわやかな風だ。ジャケットの写真もものすごくいい表情をしており、この作品の世界観を的確に表現していると言っても過言ではない。

Feels So Good

テーマ:本日のCD・レコード - ジャンル:音楽

THREEO パオロ・ディ・サバティーノ・トリオ ~幻の名盤、押し寄せる人種の坩堝グルーブ

THREEO
パオロ・ディ・サバティーノ・トリオ


オラシオ(Dr)の深く沈みこむようなハーフタイムシャッフル、パティトゥッチ(B,Eb)のファンクなエスプリが効いたウッドベースの音色。そこへ軽すぎず程よく粘りのあるスイング感のサバティーノのピアノ。1曲目から怒涛のグルーブである。

本作はイタリア人のピアニストパオロ・ディ・サバティーノの幻の名盤といわれている1枚。今やイタリアを代表する人気トランペッターのファブリツィオ・ボッソのサポートを務めるイタリアジャズシーンを代表する名ピアニスト。彼のイマジネーションが紡ぐメロディーラインはラテンの血が騒ぐのだが「田舎丸出し100%お祭り状態」ではなく、スタイリッシュなリリシズムが効いており都会的な響きだ。

サポートするパティトゥッチはエレキベースとウッドベースをどちらも超絶レベルで弾きこなす名手中の名手。ラテンアフロ系のリズムではもうホントにオラシオ無双状態だ。人種の坩堝から生まれた極上のグルーブは終わることを知らない。超絶に入手困難といわれていた幻の名盤を澤野工房が再発、これは見逃さない手はあるまい。

THREEO

■ローマ・アフター・ミッドナイト ファブリッツィオ・ボッソ(Tp)
ファブリッツィオ・ボッソのハードバップ魂が叫ぶ快作。テクニックをテクニックと感じさせないこの吹きっぷりにほれる。こちらサバティーノは未参加。

ローマ・アフター・ミッドナイト

テーマ:本日のCD・レコード - ジャンル:音楽

ラヴェル:ピアノ三重奏 ルノー・カピュソン(Vn),ゴーティエ・カピュソン(Vc),フランク・ブラレイ(P)~雅を感じる三重奏

ラヴェル:ピアノ三重奏(ラヴェル:ピアノトリオ)
ルノー・カピュソン(Vn),ゴーティエ・カピュソン(Vc),フランク・ブラレイ(P)


ラヴェルが生涯で残した作品の数はそんなに多くないという。しかし、寡作といわれている彼であってもピアノ曲からオーケストラまで実にさまざまな楽曲を書いている。わんわんんわんのラヴェル探求の旅は果てしなく険しい。

中古CD屋にてふと手にしたのが本作。ピアノ三重奏ものである。ラヴェルピアノ三重奏曲といえば「トリオ・フォンネ」の作品が有名である。以前も取り上げたことがあり、内容は「背筋か凍るほどの美しさ」で大名盤であることは周知のことだ。

本作も名盤でありがたいことにラヴェル室内楽の主要な作品はこの作品に収録されている。ラヴェル室内楽へと手を出し始めた登竜門としては最適な一枚でしかも名盤ある。偶然にもブラレイがピアノを弾いている。これだけでも大収穫である。

本作の特筆すべきところはバイオリンとチェロが兄弟である。発音や音量コントロールの丁寧さとダイナミックさ、繊細なピッチとビブラートのとりかたなどなど、呼吸の合うスリリングさは兄弟ならではのアンサンブルワーク。息が合うスリリングは朴訥ともいえる晩年のラヴェル室内楽に粘っこくない都会的な彩りを添える。

あでやかな音色と抑揚のバランス、花鳥風月をめでるようなこのセンス。こんなに「雅(みやび)」という言葉があう音楽はこれしかあるまい。

ラヴェル:ピアノ・トリオ

■ラヴェル、ドビュッシー&フォーレ:ピアノ三重奏曲 トリオ・フォントネ
無論こちらの三重奏もすばらしい。

ラヴェル、ドビュッシー&フォーレ:ピアノ三重奏曲

■インプレッションズ~ドビュッシー、ラヴェル作品集
ブラレイ(P)の素晴らしいプレイがきける。

インプレッションズ~ドビュッシー、ラヴェル作品集

テーマ:本日のCD・レコード - ジャンル:音楽

アストラル・シグナル ジーン・ハリス ~名手の隠れ名盤

アストラル・シグナル
ジーン・ハリス


ジーン・ハリス(P)というとブルーノートレーベルに吹き込まれた典型的なピアノトリオのスリーサウンズを思い出してしまう方も多いのではないだろうか。あのスインギーでブルージーでご機嫌なピアノを聴かせてくれるジャズピアノトリオの雛形みたいな存在である。彼が1970年代にリリースした本作で聴かせてくれるサウンドは「こんな一面も持ち合わせているのか」と驚かずにはいられない内容だ。実に通好みな内容である。

このころは時代の流れとでもいうのだろうかハービー・ハンコックしかりチック・コリア然り、往年のジャズピアニストたちが次々と電化サウンドを導入してゆく。しかし、その多くは残念ながらアコースティックで行っていたプレイをそのままエレキに置き換えたものであった。

ご存知アコースティックピアノとエレキピアノでは鍵盤の重さや音色もずいぶん違うもので、同じピアノと名前がつけども全く違う楽器なのである。ハービーやチックたちが現在でも語り継がれるマスターピースを電化サウンドによって成し遂げたのは「エレキと生は全く違う楽器である」との認識から自らのプレイを電化サウンド向けに追求し、貪欲に自分たちのサウンドの引き出しを増やしていったからである。

本作を聴く限りジーン・ハリスも実に多くのシンセサイザーを使用しており、ものすごく貪欲にエレキサウンドを研究していたのは間違いない。エレキ鍵盤楽器とアコースティックピアノの使い分けなど実に的確で、サウンドがとてもメロウに仕上がっている。しかしハービーやチックたちの影に隠れてしまっているというのが正直な印象である。逆にそれが「隠れ名盤」として本作が巷で語り継がれるようになったのではないだろうか。

参加するサポートメンバーも豪華でこの手の音楽には欠かせない至高の名手デビット・T・ウオーカー(Gt)、綺麗な音色でタイトなグルーブをたたき出すハービー・メイソンのドラム。中でもチャック・レイニーが弾くエレキベースは特にすばらしい。エレキベースでありながらも彼の音色は極上で、実に丁寧な音の切り方や伸ばし方、開放弦の巧みな織り交ぜ方、絶妙なタイミングではいるダブルストップとグリッサンド。これがなんとも艶っぽく聴くものの体を揺さぶる。

アストラル・シグナル

テーマ:本日のCD・レコード - ジャンル:音楽

ソロ・コンサート ラルフ・タウナー(Gt) ~どこまでも美しい音楽を即興するスリル

ソロ・コンサート
ラルフ・タウナー(Gt)

ECMレーベル(ドイツにあるジャズ周辺の音楽を発信するレコード会社)はキース・ジャレットやチック・コリアなどの傑作が数多く残してきた名門レーベルである。その音楽観は手垢で染まったブルースフィーリングやスイング感から距離をおいている。そのため、しばしばECMはジャズか否かという論争さえしばしば起こる。こんな論争が起こるようでは「音楽は2種類しかない。Good Music かBad Musicである」との発言をしたデューク・エリントンが悲しむに違いない。

「風景の見える音楽」。これがわんわんわんの抱くECMレーベルに対するイメージだ。ここでいう風景は都会の喧騒ではなく文字通り「風」やその周辺にある「景観」、広大な大自然なのである。

さて、以前ビル・エバンスがギターを弾いたなら…とジョン・アバークロンビー(以下ジョンアバ)を取り上げたことがある。彼の場合はエバンスがエレキギターを弾いていたならばという勝手な妄想であった。本作の主役ラルフ・タウナーはエバンスがアコースティックギター(クラッシックギター・スチール弦のギター)を弾いたらこうなるのではないかという人だ。しかもヨーロッパへ渡って…というおまけつきである。

ジョンアバもラルフ・タウナーもECMを代表するギタリストである。両者とも「リリシズム・静寂」という印象があるのだが、ジョンアバのつむぎだす音楽はどちらかというと都会の中の静寂だ。都会の喧騒から逃れるようにたどり着いた静かなバーの一室とでもたとえたらよいのだろう。しかし、ラルフ・タウナーの場合は大自然の中の静けさ。あえて例えるならば森林の中の静けさというのだろう。

本作はラルフ・タウナーを聴くならばまずコレ!というほどの大名盤で、ミュンヘンとチューリッヒにて行われた彼のソロライブの様子である。クラシック・ギターと12弦ギターを駆使する彼に聴衆がグイグイと引き込まれてゆき静寂の中から沸き起こる興奮を息をのんでじっと見守る様子がわかるほどの傑作だ。

楽曲も朋友ジョンアバの曲から彼の敬愛するビル・エバンスの愛奏曲Nardisまで幅広く取り上げている。彼の指先から放たれる真剣な音色は、キース・ジャレットが残したあの奇跡の録音「ケルンコンサート」に匹敵し、これほどまでの「音楽を即興するスリル」が目の前にて展開されるとなると、もはや「ぐうの音」もでない。

Solo Concert

■John Abercrombie Marc Johnson Peter Erskine
こちらが以前の記事にて取り上げたジョン・アバークロンビーの作品。コンテンポラリーなジャズギタートリオの名盤である。

John Abercrombie Marc Johnson Peter Erskine

■ケルンコンサート
いわずもなが、誰もが知る奇跡の録音。

The Koln Concert

テーマ:本日のCD・レコード - ジャンル:音楽

インプレッションズ~ドビュッシー、ラヴェル作品集 フランク・ブラレイ(P) ~心震わすピアノの音色

インプレッションズ~ドビュッシー、ラヴェル作品集
フランク・ブラレイ(P)


CDの帯は思いのほか皆が見るスペースだ。その作品の世界観をあらわすキャッチコピーが書かれており、新聞で言うと大見出しにつづくリード文のような存在だ。あのわずかなスペースに究極のキャッチコピーをねじこもうと皆で頭をひねる。それはもはや「おせんなかすな、馬肥やせ」的な一筆啓上の世界である。

本作はCDの帯に書かれた「心震わす極上の~」が妙に心へひっかかり、そのままレジへと足を運ぶこととなった作品だ。たまたま手にとってみたところ帯に書かれたワンフレーズに揺さぶられたわけである。そのときは心が震えることが減っていたのだろう。

解説文によるとフランク・ブラレイは現代フランスを代表する実力派ピアニストで1991年エリーザベト・コンクールの覇者だという。先だって開催されたクラシック音楽の祭典「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン(LFJ)」の常連だそうだ。

通して聴いてみるといやはやこれがまたすごい。まず驚かされるのは色彩豊かなピアノの音色だ。一台のピアノからあんなに多くの音色が出るのかと息をつかせる暇もない。彼の羽の生えたようなタイム感と的確なペダル操作によって、どこまでもピュアで洗練されたみずみずしい音色は思い思いに形をかえてなめらかに空間へ広がってゆく。すべてのテクニックは音楽的表現のためにあるというよい見本である。

専門的なことはさておきドビュッシーもラヴェルも二重丸である。冒頭ドビュッシーの「映像第1集」からアルバムの最終曲「亡き王女のためのパヴァーヌ」まで一気に聴きとおせてしまう。「映像第1集 水に映る影」や「亜麻色の髪の乙女」はあの名手ミケランジェロを凌ぐ完成度である。「亡き王女のためのパヴァーヌ」の背筋の凍るようなやさしい音色は全ての動きが止まってしまうくらいの感極まる演奏だ。これはまさに次の世紀へ伝えたい、いや伝えてゆくべき名盤ではないだろうかと思ってしまうほどである。

インプレッションズ~ドビュッシー、ラヴェル作品集

テーマ:本日のCD・レコード - ジャンル:音楽

MTV Unplugged トニー・ベネット ~これぞエンターテイメント!

MTV Unplugged
トニー・ベネット

先日の東京Jazz2013にて姿を見せてくれたトニー・ベネットは現在87歳!1962年生まれということは昭和元年生まれということである。その歌声やパフォーマンスは衰え知らずといったところで健在ぶりには驚かされるばかりである。近年ではレディー・ガガとの共演(ガガが歌うジャズには本物のエンターテイメントを感じ、これまたとても良いのである)がヒットして話題になっている。

本作は一時期一世を風靡したMTVの一幕である。ご存知MTVは1980年代に登場し、音楽+ビデオクリップというコンテンツで音楽を聴くものからパーソナルに視るものへとメディアシフトして新しいユーザー層を開拓した大変優れた手法である。MTVの登場によって音楽が「多産多死」の消費財となってしまった負の側面もあるのだが、新しいエンターテイメントの形として映像とともに音楽やメッセージが発信できるという優れた側面もあり、この「音+映像」という手法は現在でも引き継がれている。

さて、本作はそのMTVの中でもアタリ企画のアンプラグトシリーズで、1994年のグラミー最優秀アルバムを受賞している。トニー・ベネットがピアノトリオをバックにスタンダードを歌うという趣旨のものだが、観客の反応を聞いてもわかるようにこれが実にエンターテイメントしているのである。Fly Me To The MoonではマイクをOFFにして本当のアンプラグトにて大いに観客を沸かす。

後半ではエルビス・コステロやKDラングなどのゲストボーカルを招きいれ、そのデュエットのやり取りがとても楽しい。バックをつとめるのはピアノの紳士ともいわれる名手ラルフ・シャロン(P)、トニーベネットのお気に入りの超絶ブラシュワークの持ち主クレイトン・キャメロン。(ベースは失念。)バンドメンバーを含めトニー・ベネットの観客・共演者など収録会場にいる人すべてを巻き込むエンターテイメント能力はさすがである。

MTV Unplugged


■MTV Unplugged トニー・ベネット(DVD)
音声だけでも十分楽しいのだが、MTVなので映像つきで視るともっと楽しいことは言うまでもない。ここではクレイトン・キャメロン(Dr)の超絶っぷりを見ることができる。

MTVアンプラグド [DVD]

テーマ:本日のCD・レコード - ジャンル:音楽

ひこうき雲 荒井由実 ~ニューミュージックの草分け

ひこうき雲
荒井由実


数々の名作を残し、日本のウオルト・ディズニーとまでいわれたアニメ界の巨匠、宮崎駿が引退を表明した報道は思いのほか世界をざわめかせている。本作はユーミンが荒井由美であった1973年にリリースされた彼女の第一作目である。宮崎駿監督の映画「風立ちぬ」の主題歌として取り上げられ、最近話題が集中している。

彼女はJ-POPというかニューミュージックというジャンルの草分けである。当時シンガーソングライターというとフォークギター片手に…というイメージが強かったのだが、日記帳やモノローグのような歌詞、当時の歌謡曲としては珍しいコード進行など、これまでのJ-POP(歌謡曲)とは一線を画す存在であった。

また、彼女の特徴ともされるノンビブラート唱法は「飾り気のなさ」を際立たせ、より一層歌の世界観であるパーソナルスペース感を強調している。このノンビブラート唱法はメロディーラインをユニゾンにてちょっと補強する程度の2~3声程度のコーラス効果をねらった多重録音にて抜群の持ち味を発揮する。歌声にビブラートがかかっていると揺らぎのところでピッチが干渉してしまうので、このようなサウンドは引き出せないのである。

細野晴臣、鈴木茂、林立夫、松任谷正隆らのキャラメル・ママが全面にわたってサポートしたことにより、サウンドもかなり都会的でスタイリッシュに仕上がっている。ここでの細野晴臣氏のベースプレイは泥臭いファンキーさとスタイリッシュさが両立しており、なんとも筆舌尽くしがたいこのバランス感覚がすばらしい。

ひこうき雲

テーマ:本日のCD・レコード - ジャンル:音楽

吉松 隆 : プレイアデス舞曲集 2 田部京子 ~儚くきらめく星の夢

吉松 隆 : プレイアデス舞曲集 2
田部京子(P)


本作は以前ここでとりあげた吉松隆の「プレイアデス舞曲集」の続編。吉松氏は「夢」と「星」をキーワードにした曲を収録したという。前作同様に田部の繊細なタッチは楽曲の魅力を余すことなく表現しきっている。彼女の指先からつむぎだされる儚く光るメロディーラインは花鳥風月を愛でるセンスに通じる。

偶然にも儚いという字は「人の夢」と書く。夜空の星たちは一見シンプルでありながら実際は人知の及ばない宇宙だ。宇宙というとてつもないマクロと人の対比は、星たちにこめられた人の夢をより一層強く瞬かせる。

アルバム最後「誕生日のロマンス」の楽曲におりこまれたささやかな「ハッピーバースデイ」のメロディー。楽曲の良さと田部の透き通ったあたたかい音色もあいまって、これを聴くとなんだかうれしくなってホロッとくる。綺麗な詩の短編集を読んだ読後感にも通じるカタルシスだ。

名作は何回聴いても色あせない。

吉松 隆 : プレイアデス舞曲集 2

■吉松隆:プレイアデス舞曲集 田部京子(P)
これが前作にあたる名盤だ。

吉松隆:プレイアデス舞曲集(第I集~第V集)

テーマ:本日のCD・レコード - ジャンル:音楽

 | ホーム | 

FC2Ad

プロフィール

わんx3

Author:わんx3
わんわんわんの名盤探索へようこそ!世の中の大名盤はもちろんのこと隠れ名盤も紹介いたします。

興味があったら即購入できるようAmazonのリンクも貼り付けておきました。

FC2 Blog Ranking

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

未分類 (1)
■クラシック 未分類 (77)
クラシックピアノ (37)
器楽曲 (7)
クラシック 吹奏楽 (2)
■ジャズ 未分類 (257)
ジャズピアノ (63)
ジャズトランペット (11)
ジャズサックス (38)
ジャズギター (15)
ジャズボーカル (43)
ジャズドラム (16)
ジャズベース (10)
ジャズその他 (12)
ビッグバンド (18)
コンテンポラリー (21)
ラテンなど (10)
■ポップス 未分類 (43)
ファンク・ソウルR&B (17)
ロック (5)
Jポップ (13)
■その他身辺連絡など (31)
練習台自作 (16)

RSSリンクの表示

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
音楽
2824位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
その他
269位
アクセスランキングを見る>>

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR