わんわんわんの名盤探索

わんわんわんがオススメする名盤

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Offramp パット・メセニー ~PMGの代表楽曲が多く収録された名盤

Offramp
パット・メセニー


本作にはその昔「愛のカフェオーレ」という邦題がついていた。原題のOfframpとは高速道路の出口につながる走行レーンのことだが、「愛のカフェオーレ」と名づけるこの意訳センスはなかなか侮れない。現在では原題をカタカナ表記するなどと、このようなひねりの利いた邦題をつけるというのをあまり見かけない。

グラミー賞を受賞したメセニーの傑作アルバムでパット・メセニーがはじめてギターシンセを導入した作品。長きにわたるパートナーであるスティーブ・ロドビー(B.EB)の初参加作品でもある。よく本作は「暗い」だとか「根暗」だと評されるのだが、暗い影の部分がなければ明るい光の部分は存在しないのである。やや内向的なアルバムであるがこれも多彩な音楽性をもつ「PMGらしさ」をあらわすひとつの側面である。

部分転調をくりかえす調性感の薄いシンセサイザーのコードワークの中にドミナントモーションが濃厚な短調のコードワークを混ぜ込んでくるので猛烈なカタルシスが生まれるのである。これが本作の「暗さ」に寄与しているのだがこれぞPMGサウンドの醍醐味である。シンセサイザーのライル・メイズによるオーケストレーションと、パットが奏でるアナログ楽器のように咆えるギターシンセサイザーがすこぶる相性がいい。

名曲ぞろいでAre you going with me?(邦題:ついておいで)やポップなメロディーのJames、分厚いハーモニーのThe Bat Part IIはこのころ発表されたものであるにもかかわらず、いまだにPMGのライブやコンサートで演奏されるの彼らの代表曲である。

上記のような美しい楽曲もあればオーネット・コールマンに強く影響を受けたタイトル曲Offrampのようなアブナイ楽曲もあるのでパット・メセニーはつくづく不思議な人だと思う。

Offramp

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ライヴ・アット・ブルーノート東京 ミシェル・ペトルチアーニ ~ペトルチアーニの最高傑作

ライヴ・アット・ブルーノート東京
ミシェル・ペトルチアーニ


本作はミッシェル・ペトルチアーニ最晩年の演奏で、ブルーノート東京にて行われた最後の来日公演の内容だ。本作はペトルチアーニの最高傑作として位置づける人もたくさんいるのだが、内容を聞けばその意見にはまったく異論はない。

サポートするのは名手スティーブ・ガッド(Dr)とアンソニー・ジャクソン(B)。なんとも現代的なリズムセクションなのだがペトルチアーニのサウンドにぴったりである。ガッドとアンソニーのコンビネーションはここで語るべくもなく完成されており、最強の組み合わせと言ってもよい。さらにはペトルチアーニのカラッとしたピアノタッチとガッドのコンテンポラリーなドラミングとは非常に相性がいい。

そのことが特にわかるのが3曲目の「Home」という曲だ。ピアノソロでものすごく穏やかに始まる曲なのだが、3人の演奏は次第にヒートアップして最後は大盛り上がりで終わる。ガッドとアンソニーのグルーブを楽しむようにピアノソロで「遊ぶ」ペトルチアーニとその様子を固唾をのんで見守る観客、いつの間にか自分もそこにいるかのように音源と一体化してしまう。百聞は一聴に如かず、ぜひ聴いていただきたい。

ペトルチアーニ本人もこのメンバーでのトリオを非常に気に入っていたというが、本作を吹き込んだ翌々年にペトルチアーニは帰らぬ人となった。現在はショパンの隣で安らかに眠っているという。

ライヴ・アット・ブルーノート東京

■Trio in Tokyo
Amazonではなぜかアンソニー・ジャクソン名義。上記の内容と同じ内容の再発盤だ。こちらはボーナストラックとしてAトレインが収録されている。スティーブ・ガッドのカウベルを使ったモザンビークパターンのソロがものすごく熱い!

Trio in Tokyo (Exp)

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ランデヴー 峰厚介・渋谷毅・林栄一 ~見つけたら即確保すべし!

ランデヴー
峰厚介・渋谷毅・林栄一


峰厚介(Ts)・渋谷毅(P)・林栄一(As)、日本ジャズ界で三者三様の個性を確立した名手3人による名盤だ。ジャケットも非常に味があり秀逸なデザイン。

「日本のロリンズ」とも言われた峰のテナーは確かな技術と表現力に裏付けられたゆったりとしたブロウ。本当にこの人は上手い人だ。ロリンズの名曲「オレオ」では何気ない音尻の処理も猛烈にスイングしている。やや癖のある林のアルトは繊細にピッチをとりにゆきサウンドをハーモニーさせる。二人の個性的な管楽器をつなぐのは渋谷のピアノ。穏やかなハーモニーで二人のメロディーを支える。

じっと目を閉じて本作に耳を傾けたい。お互い寄り添うこともあり、ちょっとしたバトルめいたこともあるのだが、当然のことながら3人のサウンドはつぶしあうことなく「大人のアンサンブル」を聞かせてくれる。お互いの存在をリスペクトしているのが良くわかるサウンド、この大人加減が本作を名盤たらしめているのだ。

わんわんわんはハッピーなことに発売当初だったので街のCDショップにて手に入れることができた。しかし現在はまたもや入手の難易度がぐっと高く中古在庫を丹念にあたってゆくしか手段がないようだ。何気なくリリースされているようなCDでも、後に大きく化けることもある。「ジャズの名盤は出会ったとこ勝負」という恐ろしい言葉が脳裏を掠める。

ランデヴー

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Animal Logic II アニマル・ロジック ~異種業態が集まった最高のポップス

Animal Logic II
アニマル・ロジック


ご存知の方は多分ご存知であろう。本作の収録メンバーを見たときに「これは珍しい組み合わせだ!」と驚いたものだ。アニマル・ロジックはデボラ・ホランド(Vo)、スタンリー・クラーク(B)、スチュワート・コープランド(Dr)の3人からなるポップスのバンドだ。ボーカルのデボラ・ホランドは不勉強のため存じ上げなかったのだが、エレキもウッドも超絶うまいベースの巨人スタンリー・クラーク、ロックバンドのポリスのドラマーであるスチュワート・コープランド。異種業態がタッグを組んだ作品だ。

スチュワート・コープランドはポリスを解散した後ミュージカルの舞台音楽に携わっていたという。どういうわけかスタンリー・クラークはスチュワート・コープランドと知り合いで、この二人はポップスをやりたがっていたところデボラ・ホランドと知り合い本作を作成することになったという。

内容は非常に質の高いポップスになっている。指弾き・スラップ・コードプレイなど自由自在にベースを操るスタンリー・クラーク。全般的にスタンリー・クラークのベースがフューチャーされている。ロックドラマーにしてはロックドラマーらしくないスリリングでテクニカルなプレイが冴えるスチュワート・コープランド、彼はバディー・リッチマニアなのである。デボラ・ホランドのボーカルは透き通っていながら力強くポップなカラーを持っている。

この3人を中心にして作られるサウンドは込み入った味付けに頼ることなく各楽器の役割を明確にしてシンプルでありながら広がりがあり機能的でポップなサウンドに仕上がっている。このハイパーな3人だからこそ成し得たのだろう。


Animal Logic II

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That's Him アビー・リンカーン ~のびやかで力強いジャズボーカルの名盤

That's Him
アビー・リンカーン


彼女はなかなか芸暦の長いボーカリスト・女優だが中でも一番有名な作品は本作である。1曲目から「こいつはやられた」と思わざるを得ないテナー・サックスのイントロを吹くのはソニー・ロリンズだ。

彼女は人種差別に徹底的に立ち向かう活動家としても知られており、その気質もあるのだろうか彼女の歌声には気品の高い力強さがあふれている。彼女の確かな粘りのある声質は自信に満ち溢れ聴くものをとりこにするのである。

収録メンバーもすばらしくロリンズのほかにアビーの歌に花をそえるのはケニー・ドーハム(Tp)、そしてリズムをささえるウイントン・ケリー(P)、ポール・チェンバース(B)、当時の旦那でもあったマックス・ローチ(Dr)これだけそろえば出来が悪いということはありえない。

Don't Explainにてポール・チェンバースのかわりにピアノのウイントン・ケリーがベースを弾いているのが珍しい。

That's Him

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ブラームス:4つのバラード、2つのラプソディ、間奏曲集 グレン・グールド(P) ~箱の音、弦の音、グールド晩年のブラームス名盤

ブラームス:4つのバラード、2つのラプソディ、間奏曲集
グレン・グールド(P)


本作はグレン・グールドが残したブラームス曲集のうちの1枚。かなり晩年の作品であり名盤の誉れ高い1枚である。

ロマン派の大家であるブラームスの楽曲は演奏者の力量や解釈によっては「クサさをともなう甘さ」が鼻についてしまうことがある。演奏者の個性が楽曲に流されてしまうのである。しかしグールドは楽曲の甘さに流されずブラームスの楽曲と向き合う。おそらくダンパーペダルの使用を極力抑えることにより過剰な共鳴を防ぎ、指先から放たれるタッチで一本一本の弦を素直にピアノの筐体に響かせているのだろう。それがブラームス曲集の過剰な甘さを抑え、むしろ素朴な響きにつながっている。

なにも考えずにまずは本作に一通り耳を傾けていただきたい。グールドは「無から自然に湧き出る感情」というのだろうか、ピアノを弾くというより金属の長い弦が木の箱のなかで静かに震えている様子を慈しみ響きと対話をしている。作品の完成度とブラームスの楽曲の中にもう一人の自分を見出すことに徹底的にこだわった彼らしい名盤だ。

ブラームス:4つのバラード、2つのラプソディ、間奏曲集

■ブラームス:間奏曲集/4つのバラードより/2つのラプソディ
グレン・グールド(P)
こちらがグールドののこしたブラームス作品集のもうひとつの名盤。グールドファンならば必ずおさえていなければならないマストアイテムだ。内容もさることながらジャケットもかなりよい。グールドはものすごくフォトジェニックである。

ブラームス:間奏曲集/4つのバラードより/2つのラプソディ

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Live at Starbucks レイ・ブラウン ~「レイ・ブラウン参加作品にハズレなし」

Live at Starbucks
レイ・ブラウン


これは本当に何回も聴いたものだ。本作はシアトルが発祥のスターバックス(いわゆるスタバ)にて行われたインストアライブの様子を収録したものだ。そしてさらにはスタバの店頭でしか販売していなかったということらしいが、現在では一般のCDショップでもAmazonでポチッとやれば手に入れることができるようになった。

わんわんわんは「レイ・ブラウン参加作品にハズレなし」という法則を信じているのだが、本作も法則どおりアタリである。レイ・ブラウンのバンドは毎回いいピアノといいドラムをそろえる。ピアノのジェフ・キーザーは正統派スイングからフリーキーなプレイまで何でもこなす。コンテンポラリーなオスカー・ピターソンという表現がはまるだろうか。ドラムのカリエム・リギンスも技術は抜群。モダンで気の利いた小技が炸裂する。彼はジャズだけでなくヒップホップの売れっ子プロデューサーだという。

ライブアルバムということもあってヒートアップする場面では観客から歓声や拍手がかかる。観客の反応がそのまま演奏に反映するのも本作の魅力のひとつだ。「レイ・ブラウン参加作品にハズレなし」ピアノトリオの名盤である。

Live at Starbucks

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Back to Oakland タワー・オブ・パワー ~ベイエリアファンクの名盤

Back to Oakland
タワー・オブ・パワー

本作はタワー・オブ・パワーの代表作として以前記事にて取り上げたタワー・オブ・パワーと人気を二分する名盤だ。2枚ともちょうど発売時期も同じころであるのでタワー・オブ・パワーファンの中ではどちらがよいかと言われても甲乙つけがたい。

1曲目のOakland Strokeでの緻密でメカニカルなグルーブは当時のドラム小僧たちだけでなくスティーブ・ジョーダンなどのトップドラマーたちをもびっくりさせたという。デビッド・ガルバルディのパラディドルを基調としたメカニカルなファンクパターンはノーベル賞ものである。現在でもドラム雑誌の記事などでは事あるごとにピックアップされる。

チェスター・トンプソンの「ヒコヒコ」とパルスを出すオルガンプレイも隠し味となっており秀逸。ギター、ベース、ドラム、オルガン、パーカッション、ブラスセクションすべてが有機的に組み合わさって非常に「シェイクする」リズムとなっている。録音も70年代ベイエリアの空気感がでておりワクワクするサウンドだ。

タイトでテクニカルなファンクチューンからポップでメロウなバラッドまでバランス良く収録されており、これからタワー・オブ・パワーを聴こうとする初心者にもお勧めの1枚だ。

Back to Oakland

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ジャズ&スタンダード 美空ひばり ~「天才少女ひばり」の神懸り的な耳のよさ

ジャズ&スタンダード
美空ひばり

演歌の女王美空ひばりがビッグバンドをバックにジャズのスタンダードを歌い上げたアルバムだ。タイトルだけを聴くと「色物感」がぬぐえない。冒頭のOver the Raibowというよりは、虹の彼方にからいきなり日本語で入るので少し違和感があるのだが、聴き進めてゆくとこれがまたすごい内容なのだ。

彼女の歌い方には好みの問題もあろうが、美空ひばりの歌唱について散々いろいろなところであげられているようにケチの付け所がない。ハーモニーに上手く乗っかるピッチの取り方は完璧であり、ブルーノートでわずかフラットさせる感覚、日本語にはない英語独特の発音の鋭さと、それを意識した日本語の歌いまわし、ややレイドバックしたタイムののせかた、あげれはキリがないのだがとっても「本場感・本物感」がある。

A列車で行こうのどこか甘さ漂うキュートなスキャットはまさにベティー・ロシェそのものだ。言われなければ日本人が歌っているとわからない。さらに単なるモノマネにはなっておらずしっかりとあの「ひばり節」も堪能できる。

中でも16歳の時に収録したという上海とアゲインは「天才少女ひばり」をとらえた貴重な音源だ。完璧な英語の発音、完璧なスイング感、途中で日本語に切り替わる。ここで「少女ひばり」が歌っているのだとハッとさせられるのだが、なんと当時「少女ひばり」は楽譜も読めない、英語も満足に学ぶことができなく内容はチンプンカンプンだったという。ということは耳コピでここまでやってのけてしまったのである。改めて美空ひばりの神がかり的な耳のよさに再び恐れ入る。


ジャズ&スタンダード

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ザ・トリオ 小曽根真 ~幅の広いプレイがさえる小曽根真。ピアノトリオの名盤

ザ・トリオ
小曽根真


「ザ・トリオ」といわれジャズファンが真っ先に思いつくのがオスカー・ピーターソン(P)、レイ・ブラウン(B)、エド・シグペン(Dr)による鉄壁のメンバーによるピアノトリオだ。本作はオスカー・ピーターソンを敬愛するNY在住のピアニスト小曽根真が同じNY在住のベーシスト北川潔とNYのファーストコールクラスのドラマー、クラレンス・ペンにて結成された 内容はまさに「ザ・トリオ」と冠してもまったく名前負けすることなく溌剌としている。

やはりこの人は上手い。相当上手い。ソリッドなリズムのアップテンポチューン、そしてリリカルなバラッドチューン、どんな曲であってもピアノの音の粒立ちに迷いがない。また本作はジョン・スコフィールドが参加したことも話題に上げられる。生々しくうねるギターフレーズが面白い。

そしてクラレンス・ペンのドラムの上手さが際立っている。低音を引き出した繊細な音色のシンバルワークと流れるようなタイムキーピング、適所にオカズをぶっこむ器用で細かなアンサンブルワークや海岸でそっと砂をなでるような繊細なブラッシュワークもすばらしい。

彼はトラディッショナルグリップではなくマッチドグリップだ。タムなどの移動フレーズや瞬時に入るカウベルサウンド、トラディッショナルグリップのドラマーにはないコンテンポラリーさと瞬発力がある(極めてしまえばスティックの軌道は同じようになるため持ち方はあまり関係なくなるのだが)。伝統を踏まえながらもどこかコンテンポラリーな要素が伺えるので、彼のことを調べるとやはりアラン・ドーソンの門下生という。

残念ながら店頭の流通在庫を見つけるのが難しい1枚となってしまっているようで、手に入るときは必ず手に入れたい名盤だ。

ザ・トリオ

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Old New Borrowed Blue マグナス・ヨルト ~ものすごくスイングする美メロ名盤

Old New Borrowed Blue
マグナス・ヨルト

何気なく視聴コーナーに立ち寄った際「これは!」と思った1枚。Magnus Hjorthとはどのように発音するのかわからなかったのだが、どうやらマグヌス・ヨルトと発音するらしい。メインフィールドは北欧、デンマークの人だ。北欧というと「美メロ系」のピアニストが多いのだが、このひとはそれだけではない。

たとえるならばキース・ジャレットの「美メロ」感覚にウイントン・ケリーのリズム感を持ったピアニストだ。抜けるような美しいピアノの音色とピンと背筋を張ったような元気のよいリズム感、そしてコロコロとよく歌うピアノ。繊細かつスインギーな右手のメロディーは追いかけているだけで楽しい。

左手のコンピングのボイシングも気取りすぎておらず、すっきりとした和音の響きである。和音のボイシングによって各指のタッチバランスを使い分けているのだろうか。特に2度音程などの近い音をぶつけ合うときなど2つの音が1つに混ざり合うようピアノの鍵盤をものすごく丁寧に押しているのがわかる。また、ベースやドラムも出すぎず引っ込みすぎず好サポートでバンドサウンドとしてまとまっており、録音も変にいじったところがないので非常に聴きやすい。

こういった聴いていて疲れないピアノトリオはありそうでなかなか出会えないものだ。このような作品が長く付き合える名盤となるのだろう。まだ流通在庫があるようなので探している人はぜひ手に入れることをお勧めしたい。


Old New Borrowed Blue

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April In Paris カウント・ベイシー ~春の酒がうまくなるビッグバンドの大名盤

April In Paris
カウント・ベイシー


ベイシーは学生時代にビッグバンドに在籍したことのある方なら必ず通ってきた道だ。名古屋ジャズ界のご意見番であるもりけんさんも「ビッグバンドはベイシーをやらないと」とのことである。

本作はビッグバンドジャズ名曲ぞろいの大名盤。タイトル曲のApril In ParisはもちろんのことCorner PocketやShiny Stockings、Dinner With Friendsなどビッグバンドのマスターピースがそろって収録されている。

1曲目からタイトル曲のApril In Paris。柔らかなハーモニーと猛烈にスイングするリズム。管楽器のリズムが裏返りそうで裏返らないこのスイングの絶妙さ。うまい酒を飲んでいるようで、これほど春うららかな季節に合うジャズはない。

曲が終わったらベイシーが渋い声で「One More Time」、もう一回トッティー(ビッグバンドが一番盛り上がる部分のこと)が始まる。もう一発「Let's Try, One More Once!」でトッティーをもう一回り。個人的にはもう一回やっていただきたかった。ちなみにクリスマスにちなんだライブではここのトッティーがジングルベルになる。2曲目のCorner Pocketで奏でられるトランペットソロは、いまや泣く子も黙るカリスマプロデューサーのクインシー・ジョーンズ。彼の下積み時代はベイシーバンドだったのだ。

フレディー・グリーンのツンツンギターは相変わらずバンドのビートをリードして猛烈にスイングする。ベイシーバンドのリズムの中核はドラムでもベースでもなく、ザクザクツンツンと四分音符を刻むギターなのだ。アップテンポのときのベースと一緒にサクサク刻まれる四分音符が猛烈にかっこいい。ソニー・ペイン(Dr)の鮮やかなスティックコントロールもさえる。

本作を聴き終わったら「One More Time」ともう一回頭からリピートをかける。これほど春の酒がうまくなる音楽はない。


April in Paris

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Beyond the Ocean シャリー・メイラード ~ジャズは現在進行形の混血音楽

Beyond the Ocean
シャリー・メイラード


ジャズという音楽の本質として「混血性」という側面がある。ジャズはラテンやロックなどさまざまな音楽を飲み込んだり、またほかのジャンルの音楽へ影響を与えたりと、ジャズというジャンルだけで収まらない音楽である。それはジャズの発祥をたどるとアフリカをルーツにもつ黒人の音楽(ブルース)とヨーロッパをルーツにもつ白人の音楽(クラシック)がニューオーリンズのあたりでで混ざり合ってできたといわれている。ジャズそのものが混血そのものだったからである。

本作はフランスのピアニストであるシャリー・メイラードの10枚目のアルバムだという。1曲目からピアノが小さなモチーフを膨らませ、ベースとドラムが一体となってグルーブする。いわゆるスタンダードものにありがちなジャズではないのだが、そこにはジャズのスピリッツというか宿命である「混血性」を強く感じることができる。

東欧っぽいメロディーや中近東のオリエンタルなサウンドもあり、いろいろな国と陸続きであるヨーロッパならではのスケールの広がりを感じさる。それはジャズがいろいろな音楽を取り込んで世界が広がっていくようなダイナミズムを目の前で見せてもらっているような気分だ。

メイラードのピアノは左手も右手も同じように動くのだろうか、抜群のテクニックで美しくもありながら切れのあるフレーズをエネルギッシュにつむいでゆく。ベースもピアノに劣らずインタープレイを発揮する。録音のよさがベースの「木が鳴る音」を的確に捉え、そのフレーズの息遣いなどのディテールを再現する。ドラムも非常にテクニカルでセンスもよく、その基礎力の高さと感性の鋭さを伺える。ドラムの音やフレージングが伝統を踏まえながらも程よくコンテンポラリーなところも本作の魅力である。

「BEYOND THE OCEAN」というタイトルには、海を越えてヨーロッパへやってきたジャズが現在も新しくいろいろな音楽と融合して進化し続けているというメッセージがあるのだろうか。ジャズというのはもともと現在進行形でさまざまな音楽の遺伝子をとりこむエネルギッシュな混血音楽だったということに気づかされた1枚だ。

Beyond the Ocean

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Tango: Zero Hour アストル・ピアソラ ~アルゼンチンタンゴの傑作

Tango: Zero Hour
アストル・ピアソラ

タンゴといえばアストル・ピアソラを抜きに語ることができない。クラシックやジャズ、ポップスやロックすべてのジャンルを飲み込んで、自らの立ち位置であるタンゴを最先端の音楽たらしめようとするその意気込みがすごい。彼がタンゴにおいていかに重要であるかはピアソラの迷いのない音を聞いていただければそれ以上の言葉は要らないだろう。

燃え上がるような情熱とそれに対比するようなせつなさ、アルゼンチンタンゴの魅力がいっぱい詰まった本作は、なによりも録音がとにかくすばらしいのである。録音、内容ともにピアソラ本人が「私がこれまでの人生で作り得た最高のレコードである」とまで断言する名盤である。

畳み掛けるようなピアソラの気迫せまるバンドネオン。楽器の蛇腹を伸縮させようとする意識、息遣い、発音から音尻、バンドネオンを操る鋭い感覚まで見事に記録され、ピアソラの迷いのないプレイにただただ圧倒される。ピアノ、ギター、ベース、バイオリン、パーカッション、どの音もバランスよく記録されており、楽器間での丁々発止なやり取りは超高速で正確なキャッチボールを見ているようだ。

本作をお探しの方はAmazonのリンクをたどっていただくか、クラシックのコーナーを探していただくと見つけられる。クラシック以外のものでジャズ以外のものロックでもないものをお求めの方はぜひピアソラミュージックに足を伸ばしていただきたい。

Tango: Zero Hour

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The Voice ボビー・マクファーリン ~驚異的なパフォーマンス、声の魔術師

The Voice
ボビー・マクファーリン

本作は声の魔術師ボビー・マクファーリンがヨーロッパにて行ったライブ音源である。体ひとつとマイク一本、そしていつものようにペリエを1本もっているのだろうか、大勢の観客を相手にワンマンショーを繰り広げる。

高い声低い声、大きい声小さい声、トランペットのような声、しゃべり声、いろいろな声を駆使する。ギターのワウやディレイをかけたような効果をエフェクトを使用せずにマイク一本で再現をする。そして必要であれば体のいろいろなところをたたいて全身パーカッションをする。

どこで息継ぎをしているのだろうか、メロディーのところどころにベースラインをちりばめたテクニカルで和声感を感じるアレンジ構成力は、声区の切り替えなどを考えても驚異的としか言いようがない。チャーリー・パーカーのドナリーやエリントンのAトレインなどではスキャットを圧倒的な器楽的歌唱テクニックで非常に滑らかに披露する。

また指揮者のように観客にバッキングを奏でさせ(歌わせ)自分がそこでソロを展開したり、端々にユーモアーを挟み込んで観客をあきさせないところにエンターテイメント「ど根性」を感じさせる。聴いているこちらもパフォーマンスに引き込まれるので、あっという間に楽しく時間が過ぎてゆく。いつの間にか巷で見かけなくなった名盤である。

曲目リスト
1. ブラックバード
2. ザ・ジャンプ
3. エル・ブリュッホ
4. アイ・フィール・グッド
5. ウォークマン
6. ミュージック・ボックス(オルゴール)
7. メドレー:ドナ・リー~ビッグ・トップ~イン・ザ・マネー
8. アイム・アローン
9. T.J.
10. A列車で行こう

ザ・ヴォイス

■シンプル・プレジャーズ
ボビー・マクファーリンの曲で誰しも聴いたことがある名曲「Don't Worry Be Happy」が収録されている。
と紹介したはいいものの現在は市場に出回っている中古在庫を探し回るしか入手手段がないようだ。


シンプル・プレジャーズ

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Overseas トミー・フラナガン ~猛烈にスイングするピアノトリオの大名盤

Overseas
トミー・フラナガン


本作はJAZZの名盤ガイドを手繰れば必ず登場するほどの傑作。JJジョンソンのヨーロッパツアーへトミー・フラナガンが参加した際に吹き込まれた作品だ。ここで「ピン」と来た方は相当鋭い。そうJJジョンソンの名作「Dial J.J.5」のリズムセクションでの吹込みである。

本作でのトミフラのピアノは非常にスイングしている。フレーズの端々に埋め込まれた鋭いエッジのアクセント音とそっとやさしくぼやかして出す「飲む音」の対比がすばらしく、確かな4ビートのパルスが感じられて聴いているこちらまで体が動いてしまう。

また本作はエルビン・ジョーンズはブラシの名手ぶりを発揮し自由で発想豊かなドラミングを展開している。「ジャズドラミング、ブラッシュワークの名盤」としても名高く、アップテンポからスローテンポまでエルビンのブラッシュワークが非常にスリリングですばらしく、バイブルのように愛聴するドラマーも非常に多い。

トミフラとエルビンがこれほどまで強烈なスイングの名演をしているのは、ウイルバー・リトルのベースによるところが大きいのではないかと思う。ウイルバーのベースライン自体はとてもオーソドックスで堅実で、言い方を変れば目新しいところがない。

だがしがしリズムが違うのである。ベースラインがドライブしまくるのである。それは弦に指をかけるわずかなタイミングに秘密があるのだ。その指をかけるタイミングが絶妙なので、オーソドックスなプレイであってもベースラインに猛烈な粘る4ビートのパルスが宿るのである。そこへエルビンのブラッシュワークが寄り添うのでなおさらスリリングでスインギーな演奏になるのである。

ジャケットは2種類あるようでトミフラがタバコをくゆらしているものと「C」がずらりと並んでいるものがある。「C」をたくさん並べたジャケットは海外という意味での「Overseas」に引っ掛けてあり遊び心というかとんちが利いたデザインだ。


Overseas

■Dial J.J.5 JJジョンソン
いわずとも知れ渡るジャズトロンボーンの名手JJジョンソンの名盤。
やはりここでもトミフラは「名盤請負人」の肩書きよろしく非常にスイングしたプレイをしている。

ダイアルJ.J.5

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ムソルグスキー:展覧会の絵&ラヴェル:ボレロ チェリビダッケ(指揮) ~これは最強の名演

ムソルグスキー:展覧会の絵&ラヴェル:ボレロ
チェリビダッケ(指揮)


今回で200回目の記事となりました。本ブログへお越しの全ての方々に拙文にお付き合いいただいたことをお礼申し上げます。初めの頃に比べると多少なりとも文章として体をなすようになってきているような気がします。これからもご愛顧のほどよろしくお願い申し上げます。

本作はラヴェルがらみの音源。鬼才チェリビダッケが指揮をするムソルグスキーの展覧会の絵とボレロ。チェリビダッケの個性が強く出た1枚だ。前回も取り上げたとおりチェリビダッケは音楽のためなら楽譜を無視する人である。本作はとくにテンポが遅めで、その遅さが名盤・名演たらしめているのである。

彼が手がけるテンポの遅さとは、ただ拍と拍の感覚が広いというのではない。まるでスーパースローモーションを見ているかのように個々の楽器の動きが生々しく「長い1拍はとてつもなく濃い」のである。だからピアニッシモは本当に息を潜め沈み込むくらい徹底的にピアニッシモで、フォルテッシモは全身の血が沸き立つほど徹底的にフォルテッシモとなるのである。

またチェリビダッケは本当に低音域の扱い方が抜群に上手い。旋律を補強するように低音域を使うので一つ一つのメロディーがはっきりと浮かび上がる。特にラヴェルのオーケストラ作品は「精密時計」とたとえられるくらいアレンジが緻密であるので、ラヴェルのスコアではメロディーを浮き立たせる技術がとても重要となる。

ラヴェルがとことんこだわったであろう異なる楽器の組み合わせによる響きが、他の指揮者では聴かれることが無かったくらい生々しく立体的で鮮明に浮がび上がるのである。聴きなれた楽曲であっても「あれ、こんな音も鳴っていたのか!」という驚きがあるのはチェリビダッケならではの演奏指示の手腕である。

さらに打楽器の扱い方が抜群に上手い。ホールの残響に合わせたテンポ設定わずかなタイミングと音色や音の切り方、ボリュームやタッチなどホントに細かくコントロールしているため、彼と共演する打楽器奏者は気が気でなかったのではと思ってしまうくらいだ。

これほどラヴェルの緻密なオーケストレーションが圧倒的な迫力で立体的に生々しく迫ってくる演奏はそうそうない。開演前と開演後の1分近い拍手喝采がそこに居合わせた人たちの感動を素直にあらわしている。チェリビダッケで1枚選ぶとしたら本作で間違いない。

ムソルグスキー/ラヴェル編:「展覧会の絵」&ラヴェル:「ボレロ」

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The Vanguard Date スティーブ・キューン ~幻の名盤となること間違いなし。

The Vanguard Date
スティーブ・キューン

以前本ブログで記事にしたスティーブ・キューンの「Life's Magic [輸入盤]」。今では店頭で見かけることはほとんどなくなり「再び幻となった名盤」である。本作はそのときと同じメンバーで録音されたNYにあるビレッジバンガードでのライブがあるということで迷わず入手。

内容はLife's Magicと同様やはりすばらしい。ハービー・ハンコックの処女航海を下敷きにしたボサノバチューンで始まる。これがまた名盤の1曲目としてふさわしく、キューンらしい繊細さがあふれている。しかしライブであるのでキューンのリリシズムあふれる端正なタッチのピアノは繊細なシンバルワークか冴えるアル・フォースター(Dr)、リズムを前へ前へとリードするロン・カーター(Dr)のプレイを受けて、時に静かに、時にスリリングでアグレッシブにと色々な側面を見せる。観客の反応やアル・フォースターやロン・カーターの気の利いた合いの手もあって、キューンのプレイは次々と「化学反応」を起こしながらドラマチックに広がってゆく。

この記事を書くにあたって5回は連続再生しているのだが、名手三人による音楽ドラマは全く飽きることが無い。本作は流通在庫がなくなる前に是非手に入れておきた「一生モノの宝」である。それにしてもアル・フォースターは本当にセンスもよくうまいなぁ。

The Vanguard Date [輸入盤]

■Life's Magic
本作は長い間スティーブ・キューンの「幻の名盤」として様々なディスクガイドに取り上げられており、中古市場では高値で取引されているという。ついこの間再発されたが瞬く間に流通在庫を店頭で見ることが無くなった。本当に探している人が多く、見つけ次第即時購入をオススメする。

Life's Magic [輸入盤]

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Blues & The Abstract Truth オリバー・ネルソン ~モーダルブルースの歴史的名盤

Blues & The Abstract Truth
オリバー・ネルソン


アルトサックスや編曲者、教育者として知られるオリバー・ネルソンの歴史的名盤。邦題は「ブルースの真実」という。本作はその名の通り全曲12小節でワンシーケンスのブルース形式ばかり集められている。オリバー・ネルソンがブルースをモチーフに「どこまでモダンにアレンジができるか」といった挑戦的な内容が功を奏している。

1曲目から名曲のStolen Moments。これが非常に美しいマイナーブルースだ。「内なる燃焼」という副題をあてがってみようか、ブルースが持つ感情むきだしな部分がほどよく抑制され非常に洗練されている。しかし楽曲のもつ情念はさめておらず、どこかにこみあげてくるような情熱を感じる。ジャケットのイメージそのままの内容だ。これはブルース感丸出しのセブンスコードが基調になっているのではなく、ドリアンモードとエオリアンモードやハーモニックマイナーを行き来するモーダルなメロディー展開が楽曲のキモとなっているからであろう。「モードとは?」ということが気になった方は是非入手していただきたい。

楽曲のよさもさることながら、プレイのほうも安直な言い回しだが非常によい。さすがはフレディー・ハバード。抜群のテクニックを持ち合わせ、それが全て「歌心」へと全力投球されている。彼のトランペットにはやさしさと力強さがすべて備わっており「男意気」を感じる。エリック・ドルフィーのフルートソロは「狂気の美」というべきだろう。こんなに生々しいフルートはそう吹けるものではない。アルトやバスクラリネットでのプレイもとんがりまくっていて楽しい。オリバー・ネルソン本人のプレイもモードを意識してモダンなアプローチが光る。

リリシズムあふれるビル・エバンスのピアノ、重たいが推進力のあるポール・チェンバースのベース。流れるようなシンバルレガートのロイ・ヘインズはクリスピーなスネアアクセントがパリッとしている。

ジャケットも非常に美しく作品の世界観を表現している。本記事を書くために3回くらい連続で再生している。名盤というのは何回聴いても見ても飽きないものだと再確認させてくれる1枚だ。

Blues & The Abstract Truth (Reis) (Rstr)

■Patterns for Improvisation
オリバー・ネルソンが書いた教則本。サックスだけでなく全ての楽器に幅広く応用がきく1冊だ。ディミニッシュの使い方などは非常に参考になる。

Patterns for Improvisation

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What's Going on マーヴィン・ゲイ ~メッセージが色あせることのないソウルの金字塔的名盤

What's Going on
マーヴィン・ゲイ


タイトル曲の「What's going on」には「おい、元気かい?」という呼びかけというか挨拶代わりの意味と「何?どうしちゃったの?」という不安や感情が混乱した状態をあわらす意味がある。そう、本作はまさにマーヴィン・ゲイがそう思わざるを得なかったベトナム戦争のさなか1971年に発表された作品だ。この年は本作のほかにもイマジンがジョン・レノンによって発表された時期としても知られる音楽的に重要な年である。

これまでのブラックミュージックはどちらかというとヒットチャートで一稼ぎしてやろうという目的があり、曲の内容も愛だの恋だのといった「わかりやすい」テーマが多かった。この「わかりやすさ」というのはまったく悪いことではなのだが、当時人々の心の中には現実としてベトナム戦争という時代背景があったため本音としては「わかりやすさ」では受け止めきれないほどの、慰め切れないほどの何かを抱えていたのだろう。

「わかりやすさ」が身上のモータウンレーベルにて、マーヴィンはこれまで商業主義の常套手段として扱われてきた愛だの恋だのといったカラーを薄めるべくセルフプロデュースという異例な手段をとり、戦争や貧困や公害などといった社会問題に対する自らの思いを発信した。それは「憂い」であり「怒り」であり「嘆き」であったりという人間の「複雑な感情」であった。音楽を通じて「What's going on」と呼びかけ、社会の成り行きに「What's going on」と疑問符を投げかけたのである。

マーヴィンのこういったセルフプロデュースによる社会派表現は商業的にも大成功した。当時の人々の心の中に「わかりやすさ」だけでは物足りないほど社会問題が深い影を落としていたのだろう。このセルフプロデュース路線は「ニューソウル」というベクトルで発展し、後にカーティス・メイフィールドやダニー・ハザウェイ、そしてスティービー・ワンダーの「黄金の3部作」につながってゆくのである。

違う価値観のもの同士がゆずりあうことのできない「正義」をかざしあえば必ず対立は起こる。それは大きな社会問題へと発展してしまう国家間のにらみ合いであっても親子げんかであっても起こることなのだ。1984年4月1日、自宅で父親との口論がきっかけで、マーヴィンは父親の撃った銃弾に倒れそのまま帰らぬ人となった。悲しいことにその日は彼の45回目の誕生日の前日で、さらに皮肉なことにこのとき父親が使用した銃はマーヴィンから父親へとプレゼントされたものであったという。「What's going on」は「Father,father」と何度も父親に呼びかけているため、この作品は父親に宛てたものだという説もある。

それにしても自らの「正義」とするものを振りかざしてミサイルを発射するだのしないだのと叫ぶはいかがなものだろうか。彼がこのときに発した思いは現在でも色あせることはなく、より一層力をもった永遠のメッセージとなる。

What's Going on

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Birthday Concert ジャコ・パストリアス ~コンテンポラリービッグバンドの名盤

Birthday Concert
ジャコ・パストリアス


本作はジャコ・パストリアスが30歳のときのバースデー録音で、彼の短くて太い音楽人としてのピークを奇跡的に捉えた名盤だ。もともとジャコはビッグバンドが好きで、かねてより自分のバンドを持ちたがっていたという。そして結成されたのが「ワード・オフ・マウス・ビッグバンド」。

無理やり日本語をあてがうならば「クチコミ伝説ビッグバンド」なのだろうか。本作はジャコのピークを捉えたただでさえ貴重な録音なのだがジャコのビッグバンドのライブ録音ということで、さらに輪をかけて貴重なのだ。徐々に手に入りにくくなっているようで、ビッグバンドファンならば直ぐにでも手に入れておいたほうがよい1枚だ。

程よくコンテンポラリーで交響楽のような音の広がりをもつビッグバンドのアレンジは全曲ジャコのペンによるものだ。これは彼が敬愛するギル・エバンスの影響が非常に大きくホルンやチューバなのど楽器がビッグバンドサウンドへのアクセントとなっている。書き譜のビッグバンドであっても即興性は失われていないのがギル・エバンスと同様ワード・オフ・マウス・ビッグバンドの特徴だ。

参加メンバーもピーター・アースキン(Dr)やドン・アライアス(perc)、マイケル・ブレッカー(Ts)、ボブ・ミンツァー(Reed,Ts)などなど豪華な面々で、まさに「夢の共演」状態である。ジャコのプレイのほうもまだ冴え渡っている。

しかし運命のイタズラだろうか、幸せは長くつづかない。彼はこの5年後の35歳の時、非業の死によって太く短い人生を閉じるのであった。天才は長生きしないもので、つくづく自分が凡才でよかったと思わずにはいられない。

曲目リスト
1. Soul Intro/The Chicken
2. Continuum
3. Invitation
4. Three Views Of A Secret
5. Liberty City
6. Punk Jazz
7. Happy Birthday
8. Reza
9. Domingo
10. Band Intros
11. Amerika

Birthday Concert

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Otis Blue オーティス・レディング ~捨て曲なしソウルの大名盤

Otis Blue
オーティス・レディング


「オーティス・レディングの歌はなぜあんなに切ないんだろう。」これはオーティスに憧れていたジャニス・ジョップリンが常々課題としていたことだ。これはジャニスでなくても当然行き着くところである。(ジャニスの場合はさらに「どうやったらオーティス・レディングのように切なく歌えるんだろう。」と続くのだが)

本作はのソウルの名盤として様々なところで採り上げられているようだ。必ず聴いたことのある曲ばかりで「ああこれこれ」と本作のよさを再確認。オーティス・レディングのパワフルでほのかに切ない独特な節回しは、まさにソウル=魂そのもので聴いていて非常に楽しい。バックバンドもドナルド・ダック・ダン(B)やアル・ジャクソン(Dr)と名手ぞろいだ。

曲目リストを見ていただきたいのだが、どれもこれも名曲ぞろいで正に「捨て曲無し」。非常に切ない「チェンジ・ゴナ・カム」、必ず聴いたことがある「マイ・ガール」、オーティスレディングといえばこの曲「シェイク」、ストーンズの「サティスファクション」、どれか一つをあげよといわれると非常に判断に悩む。まるでベストアルバムのようなラインナップは一生の宝となること請け合いである。

曲目リスト
1. オール・マン・トラブル
2. リスペクト
3. チェンジ・ゴナ・カム
4. ダウン・イン・ザ・ヴァレー
5. 愛しすぎて
6. シェイク
7. マイ・ガール
8. ワンダフル・ワールド
9. ロック・ミー・ベイビー
10. サティスファクション
11. 恋を大切に

Otis Blue

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The Way I Really Play オスカー・ピーターソン ~初心者から上級者と幅広く愛される名盤

The Way I Really Play
オスカー・ピーターソン


ジャズピアニストでこの人の影響を受けていない人は皆無に等しいというくらいジャズピアノ界の重要人物。なぜならばピーターソンのピアノには叙情性、スリリング、パワフルさ、スインギーさなどなど、ジャズピアノの醍醐味が全て詰まっているからだ。

本作も例に漏れずジャズピアノの醍醐味全開である。しかもライブアルバムということで臨場感タップリだ。サポートするのはいつもの「ザ・トリオ」とよばれるレイ・ブラウン(B)、エド・シグペン(Dr)というメンツにかわって、サム・ジョーンズ(B)、ボビー・ダーハム(Dr)というこれまた強力なユニット。

1曲目からボビー・ダーハムの嵐のようなドラムソロが冴えまくっている。アドレナリン全開で観客の心に火がともされてゆく様子が手に取るようにわかる。2曲目のサテンドールは名演中の名演。1曲目の熱気をクールダウン。やさしい演奏なのだがピーターソンのピアノは十分にスイングしている。ドライブしまくるサム・ジョーンズのベースワークもすばらしい。

ライブアルバムなので聴衆との一体感が自分がまるでそこに居合わせているかのごとく錯覚を生む。本作を聴いてジャズピアノが楽しくないと思えたならば、それは「ジャズと縁が無かった」と言い切っても良いほどの名盤である。


The Way I Really Play..

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シベリウス:ピアノ小品集 舘野泉(P) ~簡素で可憐なシベリウスの作品集。

シベリウス:ピアノ小品集
舘野泉(P)


北欧美メロの宝庫、シベリウスのピアノ小品集である。本作には樹木や草花に因むタイトルの曲が多く収録されており、一番の有名どころは「樅(もみ)の樹」である。館野氏はそれらの曲たちに「樹の組曲」という日本語をあてている。このセンスが非常に北欧っぽくシャレている。

シベリウスは一時期大量にこういった小品集をリリースしたという。その背景には楽曲のもつ美しさや愛らしさに似つかわしくないエピソードがあるそうだ。世間が第一次世界大戦に突入しはじめたころ、契約を結んでいたドイツの出版社からシベリウスのところに印税が入らなくなり、取り急ぎのお金を工面するためにこういったピアノ曲を次々と書き上げていったという。

なんともアレなエピソードはともかく、本作は非常にすばらしい。全編にわたってどの曲もシンプルで美しく、さらにシベリウスらしい北欧的なリリシズムにあふれており大変魅力的な作品ばかりである。舘野氏の深遠なるピアノタッチが生む端正で粒のそろったピアノの音色はシベリウスの楽曲にピッタリである。

これはもう「全曲捨て曲無し」の大名盤である。夢にでてくる北欧の1シーンを思い起こさせるジャケットも内容同様に非常に美しい。思いのほか人気の高い1枚なので見つけたらすぐさま購入をオススメする。

シベリウス:ピアノ小品集

■北の詩情~シベリウス ビータサロ(P)
以前本ブログにて採り上げたことがある作品だが、これもまたシベリウスピアノ小品集の名演奏で、クラシック名盤の殿堂である。

北の詩情~シベリウス:珠玉のピアノ小品集

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グールド・プレイズ・スクリャービン&シベリウス ピアノ:グレン・グールド ~現代によみがえるグールドスピリッツ

グールド・プレイズ・スクリャービン&シベリウス
ピアノ:グレン・グウールド


グールドは超完璧主義とも潔癖主義、いわゆる「変わり者」として知られている。イスの高さは365mmと決まっており、少しでも気に入らないとリハーサルの最中オーケストラをほったらかしでイスの高さを30分もかけて調整するという。もちろん自分の演奏についても一考もっており、彼はある理由から「20世紀最高のピアニスト」と話題になり人気絶頂を迎えた32歳のとき、一切のコンサート活動からパタリと手をひいてしまったのである。

グールドが一切のコンサート活動から手を引いてしまった理由は諸説ある。コンサート会場へ向かうための移動による心身消耗、会場のノイズや観客からの視線がプレッシャーとなていたこと、音楽がもつ時間芸術という修正のきかない一過性の残酷な側面が許せなかったこと、…自ら追求する音楽の理想のカタチを具現化するためにたどり着いたところが、何度もプレイバックしながら検討を重ねられる「録音」という手段だった。

レコーディングでは異常なまでに演奏の完璧性を求め録音の編集を偏執的に行ったという。DAWが普及した現在ではトラックの差し替えやボーカルのピッチの修正まで何でもアリなのだが、当時は現在のようにPCなどはないので何度も何度も納得がゆくまで録音をしなおしたのである(もちろんグールドのレベルであれば1発OKなものも多数あったという)。

本作は2012年がグールド没後30周年ということでリリースされたアニバーサル盤。スクリャービンやシベリウスなど北欧系の美メロがタップリつまった作品だ。グールドが凝りにこった録音を現在のテクノロジーでさらに音響調節したものだ。現在グールドが存命ならば必ずここまでやっていたはずである。

演奏内容はさすがで非の打ち所が無い。打鍵のスピードと深さのコントロール、音の長さ、全てが彼らしく緻密にコントロールされており、ワンフレーズでも音符の一つ一つに魂が宿っている。音色の美しさはリミックステクノロジーの力もあって非常にハイレベルである。

グールド・プレイズ・スクリャービン&シベリウス[2012年ニュー・リミックス&アコースティック・オーケストレーション版]

■Glenn Gould Plays Sibelius
こちらもグールドの大名盤。美メロの宝庫として人気の高いシベリウスのピアノ小品集だ。しかし今回紹介したものと内容がかぶっているらしい。

Glenn Gould Plays Sibelius

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ラヴェル:ボレロ、他 指揮:ミュンシュ パリ管弦楽オーケストラ ~稀代の爆演王ミュンシュ

ラヴェル:ボレロ、他
指揮:ミュンシュ パリ管弦楽オーケストラ


本作は「稀代の爆演王」ミュンシュがパリ管弦楽オーケストラ(いわゆるパリ管)と共演した名盤。時々中古市場で見ることが出来るのだが気がつくといつのまにか売れてしまっている、そんな不思議な1枚。きっと隠れマニアが多いのであろう。やはりパリ管は圧倒的に木管楽器が上手い。打楽器も音色のコントロール力やダイナミクスの制御がうまい。しかし「稀代の爆演王」ミュンシュは型にはまった演奏はさせない。

1曲目はおなじみのボレロ。静かに淡々とモチーフが展開されてゆく前半部分は少々味気ないと感じるが、聴き進めてゆくとそれはミュンシュがしかけた時限爆弾であることに気づく。後半に突入するとリズムのポイントや楽器のピッチなどどこかが歪むとたちまち崩壊しそうなくらい手に汗を握るスリリングな展開になってゆく。そこは本能の赴くままに危うい緊張感のオーケストラを操る「爆演王」ミュンシュ。果物は腐る手前が一番美味しいとのことだが「腐る」と「熟す」の見極めが非常に難しく、制御不能の乗り物のような状態になったオーケストラを神業でもってクラシック名演・名盤としてしまうのが彼のすごいところだ。

収録曲も名曲ぞろいだ。ラヴェル作品の中でも屈指の美曲として異色を放つ「ダフニスと~」はまるで朝日が昇る神々しさのような美しさ。弦と木管の演奏指示にたいするバランス感覚、そして生々しい程のダイナミックな演奏設計、「稀代の爆演王」ミュンシュにかかれば数あるラヴェル作品の中で群を抜いた名演・名盤となるのは当然であるのだ。ラヴェルのなかでも比較的習作的と呼ばれる「亡き王女のためのパヴァーヌ」も彼の手にかかればもちろん名演の仲間入りである。

緻密なハーモニーと香り高いオーケストレーション、ラヴェル作品収集家であれば必ず持っていたい1枚だ。


ラヴェル:ボレロ、他

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モントルー・ジャズ・フェスティバル1972 スタン・ゲッツ ~ゲッツ自らレギュラー化を望んだ伝説のライブ

モントルー・ジャズ・フェスティバル1972
スタン・ゲッツ

これは凄い。本作はスタン・ゲッツが結成間もないリターン・トゥ・フォーエヴァーのチック・コリア(P)とスタンリー・クラーク(B)とトニー・ウイリアムスを従えて行われたライブを録音したものである。以前はイタリアのどマイナーレーベルからしか出ていなかったため一部では「伝説のモントルーライブ」とまで呼ばれた名盤だ。

これだけのメンツがそろっているので内容は悪いわけが無い。リリカルなタッチで奏でられるチック・コリアのピアノ、もちろんフェンダーローズも炸裂。エレキベースもアホのように上手いがウッドベースもこれまたアホのように上手いスタンリー・クラーク。そしてバラードではまことに美しくアップテンポでは激しく煽る天才トニー・ウイリアムスのドラム。バンドは一触即発爆発寸前でゲッツもいつになくハードなブロウを聴かせてくれている。
スタン・ゲッツはこのバンドを自分のレギュラーバンドにしたかったほど非常に気に入っていたそうだ。

曲目リスト
1. Captain Marvel
2. Day Waves
3. Lush Life
4. Windows
5. I Remember Clifford
6. La Fiesta
7. Times Lie

モントルー・ジャズ・フェスティバル1972

■モントルー・ジャズ・フェスティバル1972 [DVD]
同じライブの映像が存在する。これは視ない手は無い。全盛期のトニー・ウイリアムスのドラムソロがたっぷり拝める。全国、いや全世界のドラマーそしてドラム好きトニーおたくのお方は必見。シンバルレガート時の腕の動かし方、トニー独特なハイハットの揺らし方、連打時での右足のスナップの使い方、左手の使い方、超高速シングルストローク「フェラーリロール」の秘密、スイスアーミートリプレッツの使い方、どこをとっても痛快なまでのトニーのドラムソロが拝めます。

モントルー・ジャズ・フェスティバル1972 [DVD]

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Rejoicing パット・メセニー ~オーネットを題材としたパットメセニーのギタートリオ+α名盤

Rejoicing
パット・メセニー


本作はたしかパット・メセニーの作品だったと思ったのだが、Amazonで調べてみるとビリー・ヒギンス名義になっている。手に入れるときは確かパット・メセニーで探したはずなのだが…。

まあその話は置いといて、本作はパット・メセニーの隠れた名盤といえよう。なぜならば大のオーネット・コールマン好きであるパット・メセニーが、オーネット・コールマンの最高といわれているリズムセクションのチャーリー・ヘイデン(B)、ビリー・ヒギンス(Dr)と収録しているからだ。

ここではいつものパット・メセニー・グループで見られるようなフュージョンサウンドではなく、彼のジャズギタリストとしての作品だ。曲目も彼らしくオーネット・コールマンの名曲が数々収められている。オーネットの楽曲はとても面白い。あのMJQのジョン・ルイスがオーネットの作曲センスにびっくりしたとのことだが全く同感である。よく「宇宙人」とたとえられるメセニーが強くオーネットの楽曲に惹かれる気持ちがよくわかる。ただし1曲目のLonely Womanはオーネットの楽曲ではなくホレス・シルバーの作品である。

6曲目のStory From A Strangerではパットの最大の相棒であるライル・メイズ(Key)も参加しおり、少しパット・メセニー・グループらしいところもある。あの「キュツ」と切なくなるシンセギターの音が聴けるのだが、リズムセクションがチャーリー・ヘイデンとビリー・ヒギンスなのでこれは非常に新鮮で面白いサウンドに仕上がっている。

フリーであれビバップであれ、どんなスタイルの音楽でもサクサクとこなしてしまうチャーリー・ヘイデンの懐の深さ、ビリー・ヒギンスの繊細で非常にセンスのよいドラミングが光る。本作をビリー・ヒギンス名義のアルバムとしてAmazonが取り扱うのもおかしな話ではない。こうやって聴いているとアルバムの名義はパット・メセニーでもビリー・ヒギンスでもチャーリー・ヘイデンでも良いように思える。これがトリオという編成の特性かもしれない。本作は密かに探し続けている人が多いジャズギターの名盤だ。

曲目リスト
1. Lonely Woman
2. Tears Inside
3. Humpty Dumpty
4. Blues For Pat
5. Rejoicing
6. Story From A Stranger
7. The Calling
8. Waiting For An Answer

リジョイシング

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The Sidewinder リー・モーガン ~ジャズトランペット史を語る上では外せない名盤

The Sidewinder
リー・モーガン


本作はリー・モーガン(Tp)を語る上では絶対はずせない、さらにはジャズトランペットを語る上では外すことはできない名盤である。リー・モーガンのキュッとしまるトランペットの音色が非常にカッコイイのはもちろんだが、本作はいわゆる「ジャズロック」という現象をジャズ界に巻き起こしたフックとなる作品だからだ。

1曲目のタイトル曲The Sidewinderがそのジャズロックの発端となった楽曲である。ドラムは思いっきりスイングしているのにベースとピアノはスクエアな8ビート。同じ楽曲内でも八分音符と三連符といった異なるパルスが混在しているのにもかかわらず違和感なく楽曲が成立している。これは要となる1拍目と2拍目4拍目で全ての楽器がタイトに重なり合うため、パルスがばらばらであっても聴く人は曲にあわせてカラダを動かすことができるからだ。いくつもの異なるパルスが重なりあいポリリズミックな効果がでており、それがこの曲のもつ独特の「ゆるさ」になっている。

本作はタイトル曲以外にも「おっ!」と思えるような名曲がそろっているので捨て曲なしといっても差し支えない。ジョー・ヘンダーソンのテナーも出すぎず引っ込みすぎずといった好サポートをしている。作品全体を通して聴ける力の抜けたビリー・ヒギンスのシンバルレガートが非常にうつくしい(生でみたことのある人が言うには、シンバルレガートを刻む右手がホントに脱力の極みだったそうだ)。

曲目リスト
1. The Sidewinder
2. Totem Pole
3. Gary's Notebook
4. Boy, What A Night
5. Hocus-Pocus
6. Totem Pole (Alternate Take)

The Sidewinder

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ライヴ・フロム・ザ・ブルーノート東京 チック・コリア ~いつもと違うバンドサウンド。

ライヴ・フロム・ザ・ブルーノート東京
チック・コリア


本作は1992年ブルーノート東京で行われたチック・コリアのピアノトリオによるライブを収録したものである。これを中古市場でみつけたら非常にラッキーな1枚だ。珍しいことに本作ではドラムがいつものデイブ・ウエックルではなくヴィニー・カリウタだからだ。

1曲目からヴィニー・カリウタは飛ばしまくっている。ストレートなフォービートで「嵐のような超絶技」のオンパレードである。もちろん悪い意味ではなく、ものすごく曲調にマッチした良い意味での、適材適所の技のパレードという意味である。

ヴィニー・カリウタはトニー・ウイリアムスの師匠であるアラン・ドーソンの門下生だ。アラン・ドーソンは先人たちの作り上げてきたジャズドラムの伝統や歴史に対し非常に敬意を払うとともに、ルーディメントなどドラムの基礎的で伝統的な技術をつねに新しいことへ応用することも貪欲であった。ドーソンの特徴的なハイハットの使い方がそのもっともたる例である。

カリウタもドーソン門下生らしくリズムの割り方やシンバルレガートの崩しかたが非常にモダンでおしゃれである。そしてウエックルよりもカリウタのほうがシンバルレガートの鳴らし方が繊細で丁寧なのである。これは決してウエックルが雑という意味ではなくカリウタのレガートには表情があるということだ。カリウタは「ジャズはまずシンバルの音色でバンドを煽る」ということを知っているのだ。(ウエックルはバンドを煽るとなると、シンバルの表情よりもまず手数のほうが先行してしまうのである。)

カリウタの伝統を踏まえながらもコンテンポラリーな要素を持ち合わせたところが、ややもすれはデイブ・ウエックルよりもバンドサウンドにしっくりとはまっているといっても差し支えない。その証拠としてベースのジョン・パティトゥッチもチックコリアも非常にスリリングでかつ繊細な演奏をしており、いつもと違うチック・コリア・アコースティックバンドになっているからだ。

中古市場で見かけたならば迷わずゲットしたい1枚だ。

曲目リスト
1. ハンプティ・ダンプティ
2. ニュー・ワルツ
3. ウィズ・ア・ソング・イン・マイ・ハート
4. チェイシン・ザ・トレイン
5. サマー・ナイト
6. テュンバ
7. 枯葉

ライヴ・フロム・ザ・ブルーノート東京

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